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後世に伝えたい風景のひとつは?と聞かれたら、私は間違いなく故郷・大川の「筑後川昇開橋」と答える。
この昇開橋は、昭和10年、旧国鉄佐賀線の鉄橋として筑後川河口付近に架橋された、全長507,2mにも及ぶ東洋一の可動式鉄橋だ。まるで巨大なオブジェのようにもみえ、子ども心にワクワクして眺めた記憶がある。
今はもう鉄道は通ってはいない。
しかし、遊歩道として整備されており、中央部の可動桁はしっかりと当時のまま昇降を続けている。
大川に帰郷すると私は必ず、この昇開橋を渡ることにしている。
川面を渡る風のにおい、岸辺を彩る葦のそよぎ、遠くで響く漁船の音…、ひとつ一つが幼い日の記憶に重なっていく。
こうして記憶が場所とつながり、人々の大切な風景として、未来へと継承されていくのだろう。
平成15年、筑後川昇開橋は国の重要文化財に指定され、さら
に19年には機械遺産に認定された。
モノを壊して新しいモノを創るだけでは、本当の意味での新しい文化は創れない。
大川には、伝えたいモノを大切に育む心がある。
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